卒業式直前で
3年生は卒業式の合唱を仕上げなければ。でもシラーっ、ダラーっとした空気は、なかなか変わらない。残り時間はわずか。(3年間、この空気の中でやってきた彼らを、今更どうすればいいのよ!) (残り2ヶ月ちょっとで、何ができるというのよ!)と、見事な責任転嫁。
しかし、このまんまで卒業式は迎えさせられない。
(ん?それは 誰のため? 私のプライド? いやいや、生徒達のため? ウーム。)
そんな自問自答を繰り返すうちにも、卒業式は近づいてくるのです。
(そうだ、3年生のつぶやきを拾ってみよう)あちらこちらで尋ねてみました。「ねぇ、どうして歌わないのー?」すると「あの歌が嫌いっ」 「あんな歌で卒業したくないっ」 「他の曲にしてー」
(えーっ、残り1ケ月もないというのに……。そんなぁ~。)
迷った挙句、生徒達が希望する曲への変更を、先生方に提案してみました。3年生の他の先生方は、あまりに酷い生徒達の実態を目の当たりにして「仕方ないでしょう」と、すんなりと同意してくれました。
(あぁ、こんな時期に式歌を変更するなんて…。どうなるんだろう……)
3年生を体育館に集め、曲の変更を告げると、「わぁーーーっ」と拍手!この歓声は? 自分達の要求が通ったからなのか? 好きな歌が歌えるからなのか?私は生徒達の心に届くか否か分かりませんでしたが、懇願する気持ちで訴えました。
「君達の望んだ曲なんだから、思いっきり歌って、卒業しよう!!」
後日、数人の生徒達が寄ってきて、言いました。「ケロンパ先生、3年生に人気あるよ!」
(ふーん、今の私は、妥協してるからなぁ……)
「私は人気はいらない。信頼がほしい。信頼される先生になりたい」と呟きました。
卒業式の形は整いました。3年生は歌ってました。でもこれでよかったのかという迷いが残ったままでした。3年生と出会ったのは、中学校生活を終えようとする頃。殆ど関わりを持てなかった彼らが、どのような気持ちだったのか、何も分からないままでした。
これから出会っていく生徒達を、こんな状況で送り出すことはすまい!そう強く決意しました。
音楽教師としての最後の大仕事、卒業式の合唱づくり。一人一人、それぞれの思いが詰まった3年間を、思いっきり歌声に乗せられるよう、それを目指して日々の授業づくりをする!そう決心しました。