足はガクガク、心臓バクバク

 2学期から赴任した学校の任期は、3月の年度末まででした。日々の授業をやっていくのに必死でしたが、職員室は、若い先生達の熱気にあふれ、プライベイトの生活にまで及んで諸先輩に温かく支えられていたので、どうにか冬休みまで勤められたという状態でした。
 でも次第に(ここまで酷い状況は、この学校だけかもしれない。他の学校は、もうちょっと落ち着いているのでは‥‥)と思うようになりました。
「一緒にやっていこう!」と、引き留めてくれる先生方の気持ちに応えきれず、3学期から、他の中学校の講師を希望して転任しました。

 すると、次の学校では、さらに厳しい状況に直面することになりました。
(あぁ、4月からは正式採用だ。どこもこんな状況なら、もうやっていく自信はない。合格しなきゃよかった~)と、嘆くことになってしまいました。

 

3学期から赴任した学校では‥‥
3年生…シーン。「さあ、歌おうよ!」 シーン。シラ~っ。
    重たい空気に落ち込む気持ちを、必死で払いのけながら、                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                     
   「ハイ、お腹からこうやって声出して! ほら、気持ちいいよー!」 
    返ってきた言葉が、「はーん? 金八先生気取りで何してるん?」
   (ふぅ~、どうにもならないよー。でも、卒業式の合唱は何としても仕

    上げないと‥‥)

2年生…何と、リーゼントに長ランのツッパリ軍が、生徒会役員。
    リーダー各のR男が、生徒会長。
    毎朝、彼らが立つ校門を、意を決して、車で通過。
   「帰れーーーー!」と、浴びせられる怒号。

    そして、授業では、    
    R男率いるツッパリ諸君が、始業後10分程遅れて、音楽室へ。
    ガラッ!と、勢いよく前の扉を開け、ツカツカと、自分の席へ。
    ドスン!と座ると、両足をバタッと、机の上へ。もちろん手に教具

    は無し。
   (あぁ、やって来た~、どうしよう~)
   (足を下すように言わなきゃ。でもぉー、下すわけないよね~。でも、

    でも、黙ってちゃいけないしー)
    「足を下しなさいっ!」シカトするR男。「うっるせェーーー!」

    とT男。
    もう足はガクガク。心臓はバクバク。(怖い~~)
    私がどう対処するのか、ジーッと見ている他の生徒達。 
    虚勢を張って、もう一度「足を下しなさいっ!!」 
   「うっるせェーーーー!」と、R男を先頭に、音楽室を出ていく一軍。

 毎日のように、朝から(学校に行きたくなーい、休みたーい。でも、病気でもないのに休めない‥‥)寒い冬の夜、布団を掛けずに寝ていました(熱が出たら、休める)と。でも、風邪一つひかないのです。行かなければなりません。這いつくばるような思いで行きました。生徒会役員が引き上げた後に、校門をこっそり通り抜けようと、始業ギリギリの時間に。(まるで生徒みたい)